がん基礎知識

乳癌ホルモン療法による抜け毛や薄毛の特徴及びその対処法

以前、乳がんに対するホルモン治療の副作用対策によく使われる漢方についてご紹介した。

乳がん治療副作用(更年期障害)対策に使われる三大漢方薬+1のポイント更年期障害と聞くと、女性の加齢による問題だと思われる方が大半かと思うが、更年期様の症状は卵巣摘出後や乳がん治療の副作用としても出現する。...

今回は副作用対策シリーズ第二弾として、乳がんホルモン療法における脱毛症(抜け毛・薄毛)について取り上げたいと思う。

 

乳がん治療における脱毛症

脱毛といった場合、抗がん剤治療がイメージしやすいかもしれないが、乳がんのホルモン療法でも脱毛は副作用として生じる。

意外に感じる方も多いかもしれないが、添付文書(インタビューフォーム)上にも5%未満に生じた副作用として明記されている。

同じ脱毛とはいえ、抗がん剤治療とホルモン療法とでは仕組みが異なり、正確に言えば、抜け毛や薄毛といった方がよりしっくりくるかもしれない。

抗がん剤治療による脱毛

がん細胞は分裂速度が早いという特徴を狙った治療であるため、同じく分裂の早い毛根の細胞(毛母細胞)もダメージを受ける。そのため脱毛が生じる訳だが、個人差はあるものの基本的には抗がん剤治療が終われば元に戻る。

しかしながら、乳がんの患者さんについては、抗がん剤が終わり5年経っても30%以下の回復しかしていないという人が一定数存在するという調査結果1乳癌補助化学療法における脱毛の実態 に関する多施設アンケート調査がある。

この調査では上記の他に、

  • 再度発毛するまでの期間は平均3.4 ± 4.9ヵ月
  • 発毛不良の部位は、前頭部と頭頂部
  • ウィッグの平均使用期間は12.5 ± 9.7ヵ月
  • 治療後5年を経てもウィッグから離脱できない人が一定数存在

などが報告されている。

ホルモン療法による脱毛

女性ホルモンであるエストロゲンを減らしたり働けなくする治療であるため、いわゆる更年期症状と同じ仕組みで生じ、エストロゲンが減ったことによる男性ホルモンの影響と考えられる。

上述した、乳がん患者さんでは抗がん剤終了後も髪が生えそろわない人が一定数いるという問題の一因として、抗がん剤後も継続して行われるホルモン療法の影響もあるかもしれない。

上述の調査ではホルモン療法の有無については言及していないので調査対象だった人がどのくらいホルモン療法を受けていたのかは不明だが、実際、ホルモン療法を継続している方で頭頂部などがなかなか生えそろわず悩んでいる乳がん患者さんをお見掛けする機会は少なからずある。

ホルモン療法による脱毛の特徴

脱毛症が生じる頻度

35個の臨床試験、延べ1万3415人の患者さんを対象にホルモン療法による脱毛症に関して解析した結果、

  • 脱毛症が生じた頻度は4.4%
  • タモキシフェンを使用していた人では25.4%

だったと報告されている2Alopecia with endocrine therapies in patients with cancer. Oncologist. 2013;18(10):1126-1134.

また、アロマターゼ阻害剤を使用していた患者さんのうち、

  • 236人中8%の人が脱毛症を原因として治療を中止
  • 851人中34%の人が抗がん剤治療や年齢に関係なく脱毛や髪が細くなったことを経験

という報告3Adjuvant aromatase inhibitor therapy in early breast cancer: what factors lead patients to discontinue treatment?  Tumori. 2015;101(5):469-473.4Aromatase inhibitor therapy and hair loss among breast cancer survivors. Breast Cancer Res Treat. 2013;142(2):435-443.もある。

脱毛症の程度・生じるまでの期間・影響

昨年報告された研究5Endocrine Therapy-Induced Alopecia in Patients With Breast Cancer. JAMA Dermatol. 2018;154(6):670-675.では、ホルモン療法を受け脱毛が生じている104人の乳がん患者さんのうち

  • 約92%の人が軽度(遠くから見るとわからないが近づくと明らかな症状)
  • 脱毛が生じる期間は、治療開始から平均16.8ヶ月
  • 半数以上(58%)の人は治療開始から12ヶ月以内に脱毛が生じた
  • 特に患者さんの感情面に負の影響を与え生活の質(QOL)に影響する

ということが示されている。

ホルモン療法による脱毛症への対策

上記の研究において

  • ホルモン療法による脱毛は、生え際が後退するタイプや頭頂部が薄くなるタイプが多く、パターンが男性型脱毛症(AGA)と類似
  • 頭皮への5%ミノキシジルの塗布で80%の人で改善

ということが報告されている。

乳がん患者さんに対するミノキシジルの効果

ミノキシジルについては上述のホルモン療法による脱毛や薄毛に対してだけではなく、抗がん剤による脱毛の予防効果や発毛効果についても研究6がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版がなされている。

その結果、

  • 抗がん剤投与前に2%ミノキシジルを頭皮に塗布しても脱毛予防効果はない
  • 抗がん剤治療を終えた乳がん患者さんでは頭皮に2%ミノキシジルを塗布することで再度発毛するまでの期間が50.2日短縮

という結果が示されている。

ミノキシジルは日本では市販薬として販売されている。

男性用に1%のものと5%のものが販売されている一方で、女性用には1%のものしか販売されていない。

まとめ

乳がんホルモン療法の副作用として脱毛は治療開始後1年半以内に生じ得る。

対策としてはミノキシジルが有効である可能性がある。