胃がんの5年生存率|病院別の数字だけで病院を比較できない理由と最新データの見方
最終更新:2026年8月
本記事は、以前公開していた全国・関東・東海・近畿・九州沖縄の「病院別胃がん5年生存率」に関する記事を統合し、最新の公開データに基づいて全面的に更新したものである。
「胃がんの5年生存率はどのくらいなのか」
胃がんと診断された患者や家族にとって、気になる数字の一つだと思う。
さらに病院別の生存率が公開されていることを知ると、
「生存率が高い病院の方が、胃がんの治療が上手なのではないか」
と考えるかもしれない。
しかし、病院別の5年生存率を単純に比較して、病院の治療成績をランキングすることはできない。
国立がん研究センターも、病院によって進行がんや高齢患者などの割合が異なるため、施設別生存率を単純に比較して治療成績の良し悪しを判断することはできないと明確に注意を促している。
本記事では、
- 胃がん全体の5年生存率
- ステージ別の5年生存率
- 実測生存率・相対生存率・ネット・サバイバルの違い
- 病院別5年生存率を単純比較できない理由
- 病院別データを見るときに確認すべきポイント
について、国立がん研究センターの最新公開データをもとに整理する。
まず結論:胃がんの5年生存率を見るときに知っておきたいこと
最初に要点をまとめる。
- 2018年に胃がんと診断された人の5年相対生存率は66.1%である
- 胃がんの生存率はステージによって大きく異なる
- 2014~2015年診断例の5年ネット・サバイバルは、I期92.8%、II期67.2%、III期41.3%、IV期6.3%である
- ただし、この数字をそのまま個々の患者の「5年後に生存している確率」と考えることはできない
- 病院別生存率は公開されているが、患者の年齢、病期、併存疾患などが病院ごとに異なるため、病院の治療成績ランキングには使えない
- 生存率は過去に診断された患者のデータであり、現在の治療成績そのものを示すわけではない
現在は国立がん研究センターが「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」を公開しており、病期、年齢、性別などを指定して生存率を調べることができる。
胃がん全体の5年生存率は66.1%
国立がん研究センターが公表している全国がん登録の最新データでは、2018年に胃がんと診断された人の5年相対生存率は66.1%である。
男女別では、
- 男性:67.5%
- 女性:63.2%
となっている。
ここでいう「5年相対生存率66.1%」を、
胃がんと診断された人が5年後に生きている確率は66.1%
とそのまま解釈するのは正確ではない。
相対生存率は、胃がん患者の実際の生存率を、同じ性別・年齢などを持つ一般人口の期待生存率と比較することで、がん以外の死因の影響をできるだけ取り除いた指標である。
また、胃がんの予後はステージによって大きく異なる。
したがって「胃がんの5年生存率66.1%」は、日本の胃がん患者全体の状況を把握するための統計値であり、個々の患者の予後予測値ではない。
胃がんの5年生存率はステージによって大きく異なる
現在公開されている院内がん登録の最新5年生存率は、2014~2015年に診断された患者を対象としている。
胃がんの病期別5年ネット・サバイバルは以下の通りである。
| ステージ | 5年実測生存率 | 5年ネット・サバイバル |
|---|---|---|
| I期 | 82.0% | 92.8% |
| II期 | 60.2% | 67.2% |
| III期 | 37.4% | 41.3% |
| IV期 | 5.8% | 6.3% |
ステージIでは5年ネット・サバイバルが90%を超える一方、ステージIVでは6.3%であり、病期によって大きな差がある。
したがって、胃がんの生存率を考える際には、「胃がん全体で何%か」よりも、まず病期を考えることが重要である。
ただし、この表にも注意が必要である。
対象となったのは2014~2015年に診断された患者であり、2026年現在に治療を受ける患者と治療内容が同じとは限らない。生存率は必然的に過去の患者を長期間追跡して算出するため、最新の治療法の効果が十分に反映されていない場合がある。
「66.1%」と「70.2%」など数字が違うのはなぜ?
胃がんの生存率を調べていると、サイトや資料によって異なる数字が出てくることがある。
これは必ずしも間違いではない。
例えば、
全国がん登録
- 2018年診断例
- 5年相対生存率:66.1%
であるのに対して、院内がん登録の2014~2015年診断例では、
院内がん登録
- 5年実測生存率:62.3%
- 5年ネット・サバイバル:70.2%
となっている。
この違いは、
- 対象となる患者集団
- 診断された年代
- 集計対象となる医療機関
- 生存率の計算方法
などが異なるためである。
したがって、異なる統計の数字だけを横に並べて、
「胃がんの生存率が66.1%から70.2%に改善した」
と判断することはできない。
生存率を見るときには、数字だけでなく「誰を対象に、どの方法で計算した数字なのか」を確認することが重要である。
実測生存率・相対生存率・ネット・サバイバルの違い
生存率にはいくつかの種類があるため、簡単に整理しておく。
実測生存率
胃がん以外の原因も含め、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率である。
例えば100人の患者のうち、診断5年後に70人が生存していれば、5年実測生存率は70%という考え方である。
相対生存率
患者と同じ性・年齢などを持つ一般人口の生存率を利用し、がん以外の死亡の影響を補正した指標である。
これまで、がんの治療成績などを評価する指標として広く使用されてきた。
ネット・サバイバル(純生存率)
統計学的に、
「がんだけが死因となる状況」
を仮定して推定した生存率である。
国立がん研究センターの院内がん登録では、2014~2015年診断例の5年生存率から、従来の相対生存率に代わってネット・サバイバルが採用されている。国際的にも広く使用される指標である。
したがって、生存率を比較するときには、同じ種類の生存率同士を比較する必要がある。
病院別の胃がん5年生存率は公開されている
国立がん研究センターでは、院内がん登録をもとに施設別の生存率も公表している。
現在は「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」を利用することで、がん種に加えて、
- 性別
- ステージ
- 年齢
- 手術の有無
などを指定してデータを確認できる。
本ブログでも以前は、公開されたデータをもとに、
- 全国
- 関東
- 東海
- 近畿
- 九州・沖縄
に分けて、病院ごとの胃がん5年生存率を掲載していた。
しかし現在は、公式サイトでデータを直接確認できる。
さらに重要なのは、病院別生存率は病院ランキングとして使うための数字ではないということである。
そのため本記事では、個々の病院の数字を転載するのではなく、「数字をどのように読めばよいのか」を中心に解説する。
病院別の5年生存率が高いほど「良い病院」とは限らない
例えば、
- A病院:5年生存率80%
- B病院:5年生存率65%
という数字があったとする。
この数字だけを見て、
A病院の方が胃がん治療に優れている
と結論づけることはできない。
国立がん研究センターも、施設ごとに進行がんの割合や高齢患者の割合など患者背景が異なるため、施設別生存率の単純比較で治療成績の良し悪しを論じることはできないとしている。
理由を具体的に見てみる。
1.ステージの割合が病院によって違う
胃がんでは、I期の5年ネット・サバイバルは92.8%であるのに対し、IV期では6.3%である。
したがって、
早期胃がんを多く診療する病院
と、
進行・再発胃がんが多く紹介される病院
を単純に比較すれば、それだけで生存率に大きな差が生じ得る。
これは治療の質とは別の問題である。
2.患者の年齢が違う
高齢になるほど、胃がん以外の疾患で死亡する可能性も高くなる。
特に実測生存率では、がん以外の死因もすべて死亡として扱われるため、患者の年齢構成による影響を受ける。
国立がん研究センターも、同じがん・同じ病期であっても年齢などの個別要因によって生存率が異なることを示している。
3.難しい症例が集まる病院もある
施設によって、患者の病期、手術の有無、併存疾患などの構成は異なる。
例えば治療が難しい患者が多く紹介される施設では、集計上の生存率が低くなる可能性がある。
したがって、患者背景を十分に調整せずに施設間を比較することはできない。
4.症例数によって数字の安定性が違う
患者数が少ない施設では、数人の転帰によって生存率が大きく変動する可能性がある。
国立がん研究センターも、施設別集計では対象数が限られるため、生存率の推定値が不安定となり、年によって大きく変動する場合があると注意を促している。
5.生存率は「現在治療を受けている患者」のデータではない
現在公開されている院内がん登録の5年生存率は、2014~2015年に診断された患者を対象としている。
5年間の経過を確認して初めて算出できる指標なので、生存率データには必ず時間的な遅れがある。
その間に治療法や診療体制が変化している可能性があるため、公開されている病院別5年生存率を、2026年現在の病院の治療成績そのものと考えることはできない。
病院別生存率を見るなら、数字以外も確認する
病院別データを見ること自体に意味がないわけではない。
重要なのは、生存率だけを単独で評価しないことである。
例えば、病院別データを見る場合には、
- どのステージの患者が多いのか
- 対象となった患者数はどのくらいか
- 患者の年齢構成はどうか
- 手術を受けた患者の割合はどうか
- データが何年に診断された患者を対象としているか
などを合わせて確認する必要がある。
院内がん登録生存率集計では、生存状況を確認できた割合も公表されている。2014~2015年の胃がん集計では、生存状況把握割合は98.1%であった。
なお、院内がん登録の生存率集計では、生存状況把握割合が90%未満の施設を除外するなど、データの質を確保するための条件も設けられている。
病院を選ぶとき、生存率以外に何を考えればよい?
病院を選ぶ目的は「過去の生存率が最も高い病院を探すこと」ではない。
自分の病状に必要な治療を適切に受けられるか、継続して通院できるかという視点も重要である。
例えば、
- 自分の病期に必要な治療を行っているか
- 内視鏡治療、手術、薬物療法など必要な治療体制があるか
- 胃がんの診療実績がどの程度あるか
- 複数の診療科で治療方針を検討できる体制があるか
- 通院を継続できる距離か
- 必要に応じてセカンドオピニオンを利用できるか
なども、実際の病院選びでは重要な要素となる。
症例数も参考情報の一つではあるが、
症例数が多い=必ず治療成績が優れている
と単純に考えることはできない。
生存率と同様に、複数の情報を組み合わせて判断する必要がある。
自分の5年生存率を統計だけから予測することはできない
もう一つ重要なのは、
集団の5年生存率と、個々の患者の予後は同じではない
という点である。
例えば「ステージIIIの5年ネット・サバイバル41.3%」という数字は、2014~2015年に院内がん登録の対象施設で診断された多数の患者をまとめて解析した結果である。
同じステージIIIであっても、
- がんの広がり
- 年齢
- 全身状態
- 併存疾患
- 腫瘍の特徴
- 実際に行われた治療
- 治療への反応
などは患者ごとに異なる。
したがって、
「5年生存率41.3%だから、自分が5年生存できる確率も41.3%」
という解釈はできない。
生存率は、自分の未来を確定する数字ではなく、多数の患者の経過をまとめた統計情報として理解する必要がある。
最新の胃がん生存率を調べる方法
胃がんの生存率を自分で確認する場合には、国立がん研究センターの公開データを利用するのがよい。
胃がん全体の最新5年生存率を知りたい場合
「がん情報サービス」の胃がん統計では、全国がん登録による最新の5年相対生存率を確認できる。
2026年8月現在、最新値は2018年診断例の66.1%である。
ステージや年齢別の生存率を知りたい場合
「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」では、
- がんの種類で「胃がん」を選ぶ
- 「5年生存率」を選ぶ
- 必要に応じて性別を選ぶ
- I~IV期の病期を選ぶ
- 年齢階級を選ぶ
- 手術の有無を選ぶ
という方法で詳しいデータを確認できる。
ただし、表示された数値を個人の予後予測や病院ランキングとして使用しないことが重要である。
胃がんの5年生存率は「数字だけ」を見ないことが重要
胃がんの生存率は、病期や患者背景によって大きく異なる集団の統計値である。
そのため、5年生存率は個々の患者の未来をそのまま示す数字ではない。また、病院ごとに患者の病期、年齢、併存疾患などが異なるため、病院の優劣を決めるランキングとして使うこともできない。
生存率を見るときには、数字そのものだけではなく、どのような患者を対象に、いつ診断された患者について、どの方法で計算された数字なのかまで確認することが重要である。
病院を選ぶ場合には、生存率だけでなく、治療経験、必要な治療を受けられる体制、他科との連携、通院のしやすさなども含めて考える必要がある。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス.がん種別統計情報「胃」.2026年7月更新。
- 国立がん研究センター がん情報サービス.院内がん登録2014–2015年5年生存率。
- 国立がん研究センター がん情報サービス.院内がん登録生存率集計結果閲覧システム。
- 国立がん研究センター.がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2013年3年生存率、2010–11年5年生存率公表。
- 国立がん研究センター.院内がん登録2012年10年生存率集計。
この記事について
本記事は、国立がん研究センターなどが公開するがん登録統計をもとに、胃がんの生存率について一般向けに解説したものである。生存率は過去の患者集団から算出された統計値であり、個々の患者の予後を示すものではない。実際の病状や治療方針については担当医に確認する必要がある。