乳がんのホルモン療法を始めて5年ほど経つと、

「これから先も再発する可能性はあるのだろうか」

「ホルモン療法を5年より長く続ける必要があるのだろうか」

と疑問に思うことがある。

特にER(エストロゲン受容体)陽性乳がんでは、診断から5年以上経過したあとにも再発することがある。

こうした5年以降の遠隔再発リスクを考える際の参考になるオンラインツールが、CTS5(Clinical Treatment Score post-5 years)である。

CTS5は、年齢、腫瘍径、組織学的Grade、リンパ節転移数という4つの情報から、5〜10年目の遠隔再発リスクを推定する。

ただし、CTS5に表示される数字は個人の未来を正確に予測するものではなく、CTS5だけでホルモン療法を延長するかどうかを決めることもできない。

本記事では、実際の画面を見ながらCTS5の使い方を説明するとともに、表示された数字をどのように解釈すればよいのかについても解説する。

まず結論:CTS5について知っておきたいこと

CTS5について重要な点をまとめると、以下のようになる。

  • ER陽性乳がんの5年以降の遠隔再発リスクを推定するツールである
  • 年齢、腫瘍径、Grade、リンパ節転移数の4項目から計算できる
  • 5〜10年目の遠隔再発リスクをLow、Intermediate、Highの3群に分類する
  • もともとは閉経後のER陽性乳がん患者のデータから開発された
  • 表示された数字は、個々の患者が再発する確率を正確に示すものではない
  • CTS5だけでホルモン療法を延長するかどうかを決めることはできない

CTS5は、

「自分が再発するかどうかを判定する検査」

ではない。

5年間を再発なく経過したER陽性乳がんについて、その後の遠隔再発リスクがどの程度残っているのかを考えるための補助ツール、と捉えるのがよい。

CTS5とは?

CTS5は、

Clinical Treatment Score post-5 years

の略である。

ER陽性乳がんでは、診断後5年を超えてからも遠隔再発が起こり得る。

そこで、特別な遺伝子検査を行わなくても得られる臨床病理学的な情報から、晩期の遠隔再発リスクを推定する目的でCTS5が開発された。

CTS5は、ATAC試験に参加した閉経後ER陽性乳がん患者4,735人のデータをもとに作成され、BIG 1-98試験の6,711人のデータを用いて検証された 1)。

ここで重要なのは、

CTS5が予測する時期

である。

CTS5は、

乳がんと診断されてから最初の5年間に再発する確率

を計算するツールではない。

5年間を遠隔再発なく経過した患者について、

5年目から10年目までに遠隔再発するリスク

を推定する。CTS5公式サイトも、5年間の内分泌療法後まで再発なく経過したER陽性乳がん女性の晩期遠隔転移を予測するモデルとして説明している。

CTS5で予測する「遠隔再発」とは?

CTS5で予測するのは遠隔再発(distant recurrence)である。

遠隔再発とは、治療した乳房やその周囲だけではなく、骨、肺、肝臓など離れた臓器に乳がんが再発することである。

したがって、

CTS5の5〜10年リスク = 乳がんが何らかの形で再発する確率

ではない。

局所再発などを含めたすべての再発を予測する数字ではない点には注意が必要である。CTS5の開発研究も、5〜10年目の遠隔再発を主な評価対象としている。

CTS5の使い方

CTS5 Calculatorで入力する項目は4つだけである。

図1.CTS5 Calculatorの入力画面。腫瘍径、Grade、年齢、リンパ節転移数の4項目を入力する。

入力する項目は以下の通りである。

CTS5の項目 入力する内容
Tumour size (mm) 腫瘍径
Tumour Grade 組織学的Grade
Patient age (years) 年齢
Number of nodes involved 転移リンパ節数

以下、画面に沿って説明する。

Tumour size (mm)

腫瘍径をmm単位で入力する。

例えば、

1.5 cm → 15 mm

である。

Tumour Grade

病理診断で評価された組織学的Gradeを入力する。

Grade 1、2、3から選択する。

Gradeは腫瘍の大きさやステージとは異なる情報である。

病理結果を見てもGradeが分からない場合には、自己判断で推測せず、病理結果や担当医に確認する方がよい。

Patient age (years)

年齢を入力する。

CTS5の開発では、ホルモン療法開始時の年齢がモデルに使用された。

Number of nodes involved

がんの転移が確認されたリンパ節の個数を入力する。

単なる、

リンパ節転移あり/なし

ではなく、

何個のリンパ節に転移が認められたか

が必要である。

4項目を入力したら、

CALCULATE RESULT

をクリックする。

CTS5の結果の見方

実際に、

  • 腫瘍径:10 mm
  • Grade:2
  • 年齢:60歳
  • 転移リンパ節数:0

として計算した例を示す。

図2.CTS5 Calculatorの結果画面。腫瘍径10 mm、Grade 2、60歳、転移リンパ節0として計算した例。

この条件では、

  • CTS5 Score:2.57
  • 5–10 Year Risk:2.9%
  • CTS5 Risk Group:Low

と表示された。

ここで最も分かりやすいのが、

5–10 Year Risk

である。

この例では2.9%となっている。

つまり、入力した条件と似た患者集団のデータから、

5〜10年目に遠隔再発するリスクが約2.9%と推定された

という意味になる。

Low・Intermediate・Highとは?

CTS5では、5〜10年目の遠隔再発リスクによって3つの群に分類する。

CTS5 Risk Group 5〜10年目の遠隔再発リスク
Low 5%未満
Intermediate 5〜10%
High 10%超

この分類によって、5年以降の遠隔再発リスクが異なる患者群を層別化できることが開発研究およびその後の検証研究で示されている。

先ほどの例は2.9%なので、

Low risk

に分類される。

CTS5の2.9%は「自分が再発する確率」なのか?

ここは誤解しやすい。

例えばCTS5で2.9%と表示されると、

「自分は97.1%の確率で再発しない」

と考えたくなるかもしれない。

しかし、そのように個人の未来を示す数字ではない。

CTS5は、年齢、腫瘍径、Grade、リンパ節転移数などが似た患者集団のデータから作られた統計的な予測モデルである。

そのため、

2.9%だから再発しない

とも、

12%だから再発する

ともいえない。

また、乳がんの予後に関係するすべての情報がCTS5に含まれているわけでもない。

例えばKi-67を含めて検討した外部研究では、CTS5でLow riskとされた患者の中でもKi-67によって晩期再発リスクに違いが認められている。

したがって、CTS5で表示される小数点以下までの数字を、個人について正確に予測された再発率として絶対視しないことが重要である。

CTS5は誰に使える?

CTS5はもともと、

閉経後のER陽性乳がん患者

のデータから開発されたモデルである。

したがって、CTS5を利用する場合には、

「誰に対して検証されたツールなのか」

を考える必要がある。

閉経前乳がんでも使える?

その後、閉経前患者を含む集団でもCTS5の検証は行われている。

閉経前ER陽性乳がんでもCTS5と晩期遠隔再発との関連を認めた報告があるが、原モデル自体が閉経後患者から作られたことは変わらない。

したがって、

閉経前でも閉経後とまったく同じように使える

と単純に考えるべきではない。

HER2陽性乳がんでは?

HER2陽性乳がんについても、CTS5と晩期遠隔再発との関連を検討した研究が報告されている。

2025年にはHERA試験のHR陽性・HER2陽性乳がん1,818例を用いた解析で、CTS5高リスク群では晩期遠隔再発リスクが高いことが示された。

一方で、CTS5が最初に開発された患者集団と現在のHER2陽性乳がん患者では、抗HER2療法を含めて治療背景が異なる。

そのため、HER2陽性の場合にもCTS5の数字だけを単独で治療判断に用いるものではない。

CTS5がHighならホルモン療法を10年続けるべき?

CTS5を調べる人にとって、最も気になる点の一つだと思う。

しかし、

CTS5がHigh = ホルモン療法を必ず10年続ける

という関係ではない。

CTS5の中心的な役割は、

5〜10年目の遠隔再発リスクを推定すること

である。

再発リスクが高い人ほど延長ホルモン療法を検討する理由は大きくなり得るが、CTS5だけで延長治療による個人の利益を確定できるわけではない。

2025年に4つの前向きランダム化試験を用いて行われたCTS5の検証でも、CTS5は晩期遠隔再発のリスク層別化には有用であった一方、延長内分泌療法の利益を判断する際には慎重な解釈が必要とされている。

ここは区別が重要である。

「5年以降の再発リスクが高いか」

と、

「ホルモン療法を延長することで、自分がどの程度利益を得られるか」

は同じ問題ではない。

ホルモン療法を5年で終了するのか、さらに延長するのかについては、CTS5だけではなく、副作用、これまでの治療内容、患者自身の背景なども含めて担当医と相談する必要がある。

PREDICTとCTS5は何が違う?

乳がんの予後を予測するオンラインツールとしては、PREDICTもある。

PREDICTとCTS5は似ているように見えるが、使う時期と目的が異なる。

PREDICT CTS5
主に使う時期 診断・手術後 ホルモン療法開始から約5年後
主な目的 術後治療による生存率への上乗せ効果などを推定 5〜10年目の遠隔再発リスクを推定
主な使い方 術後治療を考える材料 晩期再発リスクを考える材料

PREDICTは、早期浸潤性乳がんで術後治療を加えた場合に、生存率へどの程度の上乗せ効果が期待されるのかを考えるツールである。現在のPREDICT記事でも、治療による上乗せ効果と個人の未来を区別して解説している。

一方CTS5は、最初の5年間を遠隔再発なく経過したER陽性乳がんについて、

その後の5年間の遠隔再発リスクを考える

ためのツールである。

つまり、PREDICTとCTS5はどちらか一方を選ぶものではない。

答えようとしている質問が違う。

PREDICTの具体的な入力方法と結果の見方については、「乳がんの予後予測ツールPREDICTの使い方|術後治療の上乗せ効果も解説」で詳しく解説している。

乳がんの予後予測ツールPREDICTの使い方|術後治療の上乗せ効果も解説Webベースの乳がん予後予測ツールであるPredictは、乳癌術後5-15年の生存率に加えてホルモン療法や抗がん剤治療による上乗せ効果を具体的な数値として確認できる。今回は、Predictの使い方の手順を画像付きで解説する。...

まとめ

CTS5は、ER陽性乳がんについて、

5年目から10年目までの遠隔再発リスク

を推定するためのツールである。

年齢、腫瘍径、Grade、リンパ節転移数という4つの情報だけで計算できる点は大きな特徴である。

一方、表示された数字は個人の未来を正確に予測するものではない。

また、

CTS5のリスクが高い = ホルモン療法を必ず延長すべき

という意味でもない。

CTS5は、5年以降の再発リスクを数字として確認し、今後のホルモン療法について担当医と具体的に話し合うための材料の一つ、と考えるのが適切である。

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参考文献

  1. Dowsett M, et al. Integration of Clinical Variables for the Prediction of Late Distant Recurrence in Patients With Estrogen Receptor-Positive Breast Cancer Treated With 5 Years of Endocrine Therapy: CTS5. J Clin Oncol. 2018;36:1941-1948.
  2. CTS5 Calculator. Queen Mary University of London.
  3. Richman J, et al. Clinical validity of clinical treatment score 5 (CTS5) for estimating risk of late recurrence in unselected, non-trial patients with early oestrogen receptor-positive breast cancer. Breast Cancer Res Treat. 2021.
  4. Lee J, et al. Validation of Clinical Treatment Score post-5 years (CTS5) risk stratification in premenopausal breast cancer patients and Ki-67 labelling index. Sci Rep. 2020.
  5. Wimmer K, et al. Validation of the CTS5 in four prospective, multicenter, randomized ABCSG trials. 2025.
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ひろかず
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