がんと治療と家族の毎日

ステージ4 進行胃がんと戦う父の闘病記録を中心に、がんについてあれこれ綴っていくブログ。

スキルス胃癌と印環細胞癌の違い、ついでに深達度(ステージ)

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父の胃癌は印環細胞癌だ。

 

 

ネットで検索すると印環細胞癌 = スキルス胃癌という記事が沢山見つかるため、父はスキルス胃癌なのだと母は思っていた。

 

今回は、印環細胞癌とスキルス胃癌の違いについて簡単にまとめておきたいと思う。

 

 

 

印環細胞癌とスキルス胃癌、どう違う?

印環細胞癌とスキルス胃癌はそれぞれ異なる視点からの名称だ。

 

専門的に言えば、組織型分類名か肉眼的分類名かということになる。

 

詳細は以下にまとめていくが、例えるなら、印環細胞癌は自動車の形状名(セダンやミニバン、SUVなど)の1つであり、スキルス胃癌は自動車会社名(トヨタやホンダ、スバルなど)の1つだと考えるとわかりやすいかもしれない。

 

つまり、スキルス胃癌(トヨタ)の組織の中には印環細胞癌(セダン)が含まれるが、印環細胞癌(セダン)だからといってスキルス胃癌(トヨタ)だというわけではない。ホンダやスバルだってあり得るわけだ。

 

印環細胞癌とは

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胃癌の病理組織型分類の1つだ。

 

光学顕微鏡で観察すると、粘液を豊富に含む袋(小胞)が細胞の核を隅っこに押し込でいるため、印環(印鑑付きの指輪)のように見える。

そのため印環細胞癌と命名されている。

 

病理像としては非常に特徴的なので、病理学を少しでもかじった人は教科書や実際の標本などで一度は必ず目にしているといっても過言ではない癌だ。

 

印環細胞癌を含む胃癌の組織型分類

印環細胞癌は組織型分類では未分化型癌に分類される。


詳細は以下の通り。

< 一般型 >
・分化型
乳頭腺癌
管状腺癌: 高分化型・中分化型
・未分化型
低分化腺癌: 充実型、非充実型
印環細胞癌
粘液癌


< 特殊型 >
腺扁平上皮癌
扁平上皮癌
カルチノイド腫瘍
その他

 

分化型と未分化型の違いは、簡単に言えばどれだけ正常組織に近い形態(腺管形成)をしているかであり、分化型は正常を模倣した見た目、未分化型はより未熟な状態で見た目は正常とはかけ離れている。

 

印環細胞癌の特徴

一般論として、分化型癌よりも未分化型癌の方が未熟な分だけ細胞の増殖速度が速く、基本的に悪性度は高くなるのだが、印環細胞癌には特殊な特徴があることが知られる。

 

それは、進行胃癌で見つかった場合、腹膜播種(お腹の中に癌が散らばった状態)を伴うことが多く極めて予後の悪い癌である一方で、早期癌の状態で見つかった場合は胃癌の中でも最も生存率の高い癌の1つである点だ。

 

印環細胞癌が示すこのような二面性は、以下の2つ理由から生じていると考えられている。

 

早期胃癌の状態

印環細胞癌も形態は異常であるものの、正常組織を真似た重層構造を取り得ることが明らかにされており、増殖が盛んな癌細胞はその中間層に限られている。

 

このような状況下では癌細胞は胃の中で横方向への増殖はするものの、外側方向に向けての増殖(進行胃癌になる増殖)はあまり見られない。

 

そのため、粘膜内にとどまることが多く、完全に切除できる可能性が高いと考えられる。

 

進行胃癌の状態 

印環細胞癌は増殖する過程で、より増殖能力が高い低分化腺癌に変化しやすいことが知られている。

 

そのため、低分化型腺癌に変わってしまう割合が増えることで胃の外側に向けて速度を増して増殖が進み、低分化型腺癌を主体とした進行胃癌が形成されると考えられる。

 

実際、印環細胞癌は低分化型腺癌と混在していることが多い。

 

印環細胞癌は、発見された胃癌の進行度次第で大きく印象が変わる癌だと言える。

 

スキルス胃癌とは

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癌細胞が胃壁の中で増殖していくことによって胃壁が著しく厚く硬くなってしまったがんのことを指す。

 

スキルスという名称は、硬い腫瘍という意味のスキロスというギリシャ語を語源としており、その見た目、すなわち肉眼的な分類の一つと言える。

 

スキルス胃癌を含む進行胃癌の肉眼分類

進行胃癌の肉眼分類で用いられるボールマン分類では、4型にスキルス胃がんは含まれる。

詳細は以下の通りだ。

0型: 表在型 → 早期癌
1型: 腫瘤型
2型: 潰瘍限局型
3型: 潰瘍浸潤型
4型: びまん浸潤型
5型: 1-4のいずれにも当てはまらないもの

進行胃癌の中で最も多いのは3型だとされている。

 

スキルス胃癌の特徴

胃癌のうち約10%を占めており、若い人や女性の胃癌でもよく見られる。

 

近年、胃癌全体の生存率は上昇しているが、スキルス胃癌については外科的切除後の生存率についても20%程度にとどまる。

 

スキルス胃癌はなぜ悪い

スキルス胃癌を形作る癌細胞の組織型分類としては、低分化型腺癌や印環細胞癌が多い。

 

スキルス胃癌はびまん性胃癌とも呼ばれ、癌細胞が胃の中にまばらに存在し、細胞の小さな塊単位や各細胞単位で胃壁内を外側に向かって増殖していく。

 

癌が大きな塊を形成しないため、内視鏡検査などの粘膜の表面を観察する検査などでは正常な組織と区別がつきにくく、早期発見が難しい。

 

そのため発見された時には、既に腹膜播種している状態であることも多く、その割合は約40%程度とされる。

またスキルス胃癌の再発は腹膜転移であることが多い。

 

腹膜播種してしまうと治療選択肢が限られる上に、ほとんどの場合で腹水を伴っており、非常に予後が悪い。

これがスキルス胃癌の悪性度を高めている一因だ。

 

腹膜播種についてはこちらもどうぞ。

 

ちなみに、組織型分類とスキルス胃癌との関係で注意が必要なのは、低分化型癌や印環細胞癌であれば必ずスキルス胃がんになるわけではないし、分化型であれば絶対にスキルス胃がんにならないというわけでもない点である。

 

あくまでもスキルス胃癌というのは肉眼的な分類名である。

 

どの分類を一番気にするべきか

肉眼的分類や組織型分類も診断上、必要な所見ではあるが、治療する上で何が最も重要かと言えば、深達度(ステージ)分類だ。

 

胃の壁の中を癌がどれだけ進んでいるかでステージが1-4に分類されるわけだが、これによって治療方針の大筋が決まる。

 

特に他の臓器に転移があった場合は、問答無用でステージ4であり、外科的な切除は適応外となる。

 

スキルス胃癌というと、上述したように発見された時には腹膜播種を伴っていることが多いため、スキルス胃癌 = ステージ4と思われることが多いが、必ずしも全てのスキルス胃癌がそうとは限らない。

 

癌細胞が胃を飛び出して近くのリンパ節以外に転移がなければ、スキルス胃癌でもステージ2や3であることもある。

 

がんの名前に振り回されず、それぞれのがんがどのような状態なのかをしっかりと把握することが重要だろう。