Dr.Hiro's blog

胃がんの闘病記録から始まった、主にがんについてあれこれ綴っていくブログ。

乳がん治療副作用(更年期障害)対策に使われる三大漢方薬+1のポイント

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更年期障害と聞くと、女性の加齢による問題だと思われる方が大半かと思うが、更年期様の症状は卵巣摘出後や乳がん治療の副作用としても出現する。

また、40歳未満で無月経になってしまう人はおおよそ100人に1人いるとされており、更年期症状を伴うことも珍しくなく、年齢に関係なく多くの女性に身近な問題だ。

表だって症状が見えないため周囲からは理解されにくく、苦労されている方は多数いらっしゃるかと思う。

今回は、更年期障害の治療とよく使われる漢方薬の使い分けのポイントについて簡潔にご紹介する。

*当記事は乳がんの方を念頭に書いていますが、基本的には更年期障害の方全般に適用できる内容です。

 

 

更年期障害とは

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女性は誰しも成熟期の終盤にさしかかるにつれて卵巣の機能が低下する。

卵巣機能の低下は、一般に女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンの分泌量の揺らぎを伴いながらやがてその量を減らしていく。

そのため月経の不順が生じるようになり、卵巣機能が止まると月経がなくなる。

医学的には、月経が1年こなければ最後の月経をもって閉経とされ、閉経の前後5年間を更年期と呼ぶ。

 

日本産婦人科学会では、

  • 更年期に生じる様々な症状の中で、病気によるものではない症状を更年期症状
  • 更年期症状の中で日常生活に支障をきたすものを更年期障害

と定義している。

更年期の女性では、大なり小なり更年期症状は必ず生じるが、原則として日常生活に支障をきたす症状が治療の対象となる。


乳がん治療における更年期様症状

乳がんのうち最も多いタイプは、エストロゲンを取り込むことで増殖するタイプであり、そのようながん細胞はエストロゲンを受け取るための手であるエストロゲン受容体(ホルモン受容体)を持っている。

このようなタイプの患者さんの場合、体内のエストロゲンを減らす、または、エストロゲンが働けなくするような治療が投薬により行われる。

このような治療は5~10年間行う必要があり、治療を受けている患者さんには副作用として更年期症状のような症状が出現することになる。


更年期障害の治療

ホルモン補充療法

更年期障害の場合、エストロゲンの分泌が不安定になることや減少が原因であることから、エストロゲンを一部補充するという治療が行われる。

通常の更年期障害の場合はまず最初に検討される治療法であり、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)をはじめとする身体症状の他、精神的症状など様々な更年期症状に効果があり、有効率は約80%と報告されている。

しかし、乳がんホルモン治療の副作用による更年期症状の場合、エストロゲンを減らすことがホルモン治療の目的なのでエストロゲンを補充することはできない。

 

漢方薬

漢方薬は、西洋医学の薬と異なり身体全体のバランスを整える治療薬であり、更年期で生じる様々な不調に対して有効なことが多い。

乳がんホルモン療法中でも比較的よく処方されるが、下記のような注意点も。

  • 漢方は、証(西洋医学上の病名)という漢方医学独特の観点から患者さんの状態を判断し処方を行うため、証が適切に判断できていないと効果が無い(西洋医学上同じ病名の人が同じ漢方を服薬しても効果に差がある)
  • 漢方は、様々な生薬の混ざりもの(複合剤)であり、中にはエストロゲン作用を持つものもある。

 

向精神薬

向精神薬についても、更年期症状の1つであるホットフラッシュの軽減効果があることが知られている。しかし、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれるタイプの薬では、乳がん治療で用いる一部の抗エストロゲン薬の効果を弱めてしまう可能性があり、注意が必要となる。

 

更年期障害治療に頻用される三大漢方薬+1

当帰勺薬散(ツムラ23番)

血行を改善し、体を温める。
痩せて体力が弱く、胃のあたりを揺らす(叩く)と水分が動く音がし、貧血気味で少しむくみが有る人。下半身を中心に手足の冷えがあり、頭痛やめまい、肩こりがある人向け。

加味逍遙散(ツムラ24番)

血行を改善し、体を温める。
体格は中肉中背で体力が弱く、肋骨の下付近に重苦しい感じがあり、疲れやすく、肩こりがあり、不安やイライラ等を伴う人向け。
精神神経症状に効果的なことがポイント。

桂枝茯苓丸(ツムラ25番)

血行を良くすることで、のぼせを改善する。
ややがっちりした体格で体力があり、臍の下あたり(下腹部)に張りや圧痛を伴い、赤ら顔でのぼせ傾向、肩こりや頭痛がある人向け。

十全大補湯(ツムラ48番)

体力や気力を補い、全身の状態を良くする。
病中や手術後、 抗がん剤治療などにより体力が低下しているときに用いるが、 更年期障害治療でも用いられる。
疲れやすく倦怠感があり、顔色が悪く食欲がない、 皮膚粘膜は乾燥し、冷え症で貧血気味な人向け。

 

乳がん治療中で漢方薬を検討する方は主治医にご相談を。