雑記・その他

週間少年ジャンプ的視点で考える医学部の役割

毎年講義の際に医学生に標題の内容を話すのだが、最近の子達にはあまりピンとこないようでちょっと悲しい。

今回は、一般の方にも大学病院を身近に感じてもらえるよう、医学部のお仕事についてちょっと書いてみることにした。

 

週間少年ジャンプ

今回のエントリーの主役である週間少年ジャンプ(以下、ジャンプ)。

ジャンプと言えば、少年漫画の花形、誰もが知る少年誌の雄とも呼べる存在だろう。

子供時代、男の子はもちろん、女の子も何がしかのジャンプ漫画を一度は読んだことがあるだろうし、オトナになっても愛読を続けておられる諸氏も多いことと思う。

かくいう私もジャンプ黄金期と共に青い春を過ごしてきたバリバリのジャンプ野郎だ。

ジャンプの3原則と言えば、

友情・努力・勝利

主人公は冒険の途中で仲間を増やし、強敵に立ち向かうため修行をし、最後は勝つ。

ジャンプ漫画と言えば、程度の差はあれ大体このストーリーに集約される。

昭和世代にはもはや定番と化した安定感のある展開だが、最近では本誌からその傾向が薄れつつあるからなのか今の学生さんは3原則を知らないことも多い。

医学部のお仕事

さて、医学部(大学病院)の3本柱と言えば、

教育・研究・診療

である。

ご存じではない方も多いかもしれないが、医学部に属する医師は患者さんの診療を行う医師であると共に研究を行う研究者であり、学生教育を担う教員でもある。

患者さんの診療が中心の人もいれば研究が中心の人もおり、比率は個人ごとに異なるが基本的には上記3つの役割が職務となる。

この3本柱を説明すると、

教育:ヒポクラテスの時代から紡いできた英知を共有し共に戦う仲間(医師)を増やす(友情)

研究:原因不明・治療法のない病に打ち勝つための方法を探り、生み出す(努力)

診療:研究の結果に基づいた治療を行い、病める人を救う(勝利)

ほら、ジャンプ3原則とぴったりマッチ!

……ちょっと無理やりな感がしないでもないが、そこは許してほしい。

なぜこんな話を学生にするのか

当然の話ではあるのだが、医学部に入学してくる学生は医師になりたいがために来ており、基本的に医師の診療の役割のことしか見えていない。

研究や教育の価値を正しく理解できるようになるためにはある程度の時間と経験が必要なため致し方ないことではあるのだが、学生さんからは診療よりも価値が低いものとして扱われ、蔑ろにされがちである。

しかし、困難な病に苦しむ患者さんに高度な医療を提供することが大学病院の役割であり、そのような診療を担保するのは研究であり教育だ。

ジャンプ的発想で考えてもらえるとわかると思うのだが、仲間を増やしたり修行をしなければいずれ来る強敵との戦いには勝てないのだ。

ドラゴンボールで言えば、ピッコロが仲間になっていなければラディッツには勝てなかっただろうし、界王星で修業しなければベジータに手も足も出なかっただろう。

その後さらに強いフリーザやらセルやらが続々と出てくるわけだが、医学においてもかつての難敵だった感染症からさらなる強敵がんへと戦う相手が変遷している。

まさに医学はジャンプ漫画の王道であり、友情(教育)や努力(研究)がなければ勝利(診療)は成立しないのだ。

大学病院の役割を早くから理解してもらい、大学に残って一緒に戦う仲間となってくれることを願って学生さんにこんな話をしているのだが、昭和の熱量は令和では通じなくなってきているので、もう少し違う例えができるよう努力せねばなぁとも思う今日この頃。