がんと治療と家族の毎日

ステージ4 進行胃がんと戦う父の闘病記録を中心に、がんについてあれこれ綴っていくブログ。

腹膜播種で腹水が生じる理由と腹膜播種を伴う胃癌が手術できない理由

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父は、腹水を伴う進行胃癌だ。

 

胃癌と診断された時点で腹水がかなり溜まっており、腹水の細胞診で印環細胞癌の存在が確認されている。

 

印環細胞癌についてはこちら。

 

 

 

腹膜播種を有するステージ4という状態のため、手術は適応外であった。

 

母をはじめ、家族からは腹膜播種とはどういう状態で、なぜ手術ができないのかと聞かれることが多かった。

 

その理由について、簡単にまとめておきたい。

 

 

 

腹膜播種とは

がん細胞が腹腔内に転移している状態をさす。

 

胃癌の場合は、胃の漿膜(一番外側の膜)から飛び出して腹膜へと転移した状態。


癌細胞が種を蒔くように腹膜内に無数に散らばることから腹膜播種と呼ばれる。

 

胃癌や大腸癌のような消化器系、卵巣癌や子宮体癌といった婦人科系の腹部を原発とするがんが腹膜播種を生じやすい。

腹膜播種によりがん性腹膜炎が生じることで腹水が増加し、さらに進行すると腸閉塞、水腎症などを引き起こす。


腹膜播種と腹水の関係

そもそも腹水とは

正常な人にも僅かな量(約20-50 ml)ではあるが腹腔内には生理的な液体が存在しており、臓器間の摩擦を防ぐためのクッションの役割を果たしている。

 

この生理的な液体は腹膜や血管により産生と吸収が行われ、一定量になるようコントロールされている。

 

その量が何らかの理由により異常に増加した状態が腹水という状態である。

 

100 ml 程度の腹水の場合、超音波検査やCT検査で調べれば見えるが、見た目に変化はほとんどない。

 

1000 ml を超えてくると腹囲の増加が生じるなど、身体所見として目立ち始める。

 

がんで腹水が生じる要因

がんによる腹水といった場合、主に以下の4つの要因が挙げられる。

1 血管透過性の亢進
2 肝転移などによる門脈圧の亢進
3 がん細胞によるリンパ管の閉塞
4 血中アルブミン量の低下

このうち、4については必ずしもがんを原因とする訳ではないが、がんに伴う低栄養や肝硬変で生じる。

この中で腹膜播種による腹水は、血管透過性が上昇することによる。

 

腹膜播種が腹水を増加させる理由

癌細胞は、細胞の増殖を促すタンパク質の一つである血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を分泌するため、転移先の腹膜で新たな血管網を構築(血管新生)することに加えて、血管透過性を高めることが知られる。

さらに癌細胞が腹膜で炎症を引き起こすため、血液中に存在している白血球などの炎症に関わる細胞や成分がそこに移動するために血管の透過性が上がる。

その結果、水分も腹腔内に滲み出てくるため腹水の増加が起こる。

この場合の腹水は滲出性腹水と呼ばれ、タンパク濃度が高く細胞成分も多い。

 

腹膜播種を伴う胃癌が手術ができない理由

胃癌を根治できるのは手術だけ

がんに対する治療としては、外科的な切除、放射線治療、薬物療法(抗がん剤治療)が挙げられるが、胃癌をはじめとする消化器がんの場合、外科的に切り取ることが唯一の根本治療となる。

 

唯一の根治療法なのになぜ手術ができないのか

手術適応の可否は、がんを残さず完全に取りきれるか否かで判断される。

 

なぜなら、手術後に癌が少しでも残ってしまうと、手術で体力が落ちている中再びがんが増殖してしまい、あっという間に癌細胞に負けてしまう可能性や手術によって出来た傷口からあちこち転移して余計に悪化する可能性などがあるためだ。

 

つまり、癌を完全に取りきることの出来ない手術は患者にとって基本的には良いことはない。

  

腹膜播種の場合、肉眼で見える物だけではなく、無数の癌細胞が腹膜内に散らばっているため、全て取り切ることは不可能と言える。

 

従って、腹膜播種を含むステージ4の癌に対して正確に言えば、手術が”できない”のではなく、”やらない”というのが正しい。

さらに言えば、リスクが高いため”やってはいけない”のだ。

 

ただし、 卵巣癌のように比較的抗がん剤がよく効く癌の腹膜播種の場合は、可能な限り外科的に取り切ってから術後の抗がん剤治療を行う。

 

胃癌についても今後、画期的な抗がん剤が開発されれば手術を取り巻く状況が一変するかもしれない。