Dr.Hiro's blog

胃がんの闘病記録から始まった、主にがんについてあれこれ綴っていくブログ。

本当にがんの発症率に関わる食べ物ってどれくらいあるのか?

スポンサーリンク

f:id:hirokazu-y:20191208012957p:plain

 

ひょんなことから目にした下記記事。

 

kaigo.news-postseven.com

 

記事によれば、

がんの罹患率が上昇している日本。予防のために、日々の生活の中で、どのような食材を口にしていいのか。科学的根拠に乏しい健康情報が巷に溢れる中、しかるべき研究機関で立証された医学的データを世界中からリサーチ。ここでは、発がんリスクを上げる食べ物とリスクを下げる食べ物を併せて紹介する。

 

とのことで、食材の具体例を挙げて科学的根拠に基づくリスクの話をしている体なのだが、内容がまあ片手落ちと言うか、無駄に煽っているというか。

 

今回は記事で紹介されている"がんの発症率に関わる食材"について一部例を挙げつつ、本当に意味があるのか考えてみたい。

 

 

牛乳を沢山飲む女性は卵巣がんリスクが上がる?

記事内では、牛乳や乳製品から乳糖を多量に摂取する人は卵巣がんのリスクが13%上がるという2006年に発表された研究を根拠として示している*1

 

これだけ読むと、そうなんだ!と納得してしまうかもしれないが、この結果は唯一にして絶対的に信頼できるものなのだろうか?

 

乳製品と卵巣がんとの関係を調べた研究の数は?

牛乳などの乳製品の摂取量と卵巣がんリスクを調べている研究は2017年までに上記の研究を含めて28件報告されており、卵巣がんのリスクを高めると結論付けている研究は上記を含めて実は3件だけしかない*2

 

28件中25件は、牛乳やチーズ、ヨーグルト等など乳製品の摂取と卵巣がんリスクに関係はないと結論付けている。

 

リスクがあるかもしれないということを啓蒙することは悪いことではないが、統一的な見解が得られていないものを悪い面のみを断定して紹介するというのはいかがなものだろうか。

 

牛乳は危ないから飲むのをやめようと思う人が出るかもしれない。

 

牛乳は手軽にカルシウムやタンパク質が得られる食材だけに、飲むのをやめるとそのメリットを失うことになる。

 

ちなみに、上記のリスクも加味した上で、ハーバード大学からは牛乳は1日コップ1~2杯が摂取量として推奨されている。

 

コーヒーを毎日5杯以上飲む人は肝がんリスクが大幅に下がる?

記事内で根拠としているのは、日本人を対象とした多目的コホート研究の結果*3

 

コーヒーを1日5杯以上飲む人では肝がんリスクが76%低かったと報告されている。

 

これだけ読むと、肝がん予防のためにコーヒーをたくさん飲もう!と思われるかもしれない。

 

また、コーヒー飲めないけど、その場合どうしたらよいのかな?という方もおられるかもしれない。

 

ここでポイントになるのは、肝がんの約8割はウイルス感染(B型肝炎ウイルス or C型肝炎ウイルス)が原因であること。

 

肝炎ウイルスに感染していなければ肝がんを発症するリスクがそもそも低いので、予防を目的としてコーヒーをたくさん飲むメリットはほとんどない。

 

それよりもB型肝炎ワクチンを受けることの方が確実に効果があるだろう。

 

ワインを毎日グラス6杯以上飲む人はがん全体のリスクが増える?

これも記事内で根拠としているのは、日本人を対象とした多目的コホート研究の結果*4

 

なぜ記事内ではワイン表記にしたのかよくわからないが、上記研究の結果では1日あたり、日本酒でいえば3合、ビールでいえば中ジョッキ3杯程度以上毎日飲む男性ではがんのリスクが1.6倍に増加したことが示されている。

 

アルコールはこの研究以外でも大腸がん食道がん、乳がんなどのリスクを高めることが知られており、お酒の飲みすぎは体に良くないというのは皆さんご承知の通りの事実だろう。

 

ところで、飲酒に喫煙習慣を加味すると、たばこを吸う男性では飲酒量に応じて発がんリスクが高まり、日本酒3合以上を毎日飲むとがんを発症するリスクが2.3倍高まることが上記の研究で報告されている。

 

一方で、たばこを吸わない人では飲酒量が増えても発がんリスクは高くならなかった。

 

たばこ単独のリスクについては、吸う人は吸わない人に比べて全体的な発がんリスクが男性1.6倍、女性1.5倍に高まるということが報告されており、今回紹介する食事のリスクよりもたばこの方がよっぽどリスクが高かったりする

 

牛・豚などの赤肉を毎日食べる女性は結腸がんリスクが高い?

これも根拠としているのは、日本人を対象とした多目的コホート研究の結果*5

 

この研究においては、1日の赤肉の摂取量が多い女性(約80g以上/日)では大腸がん(結腸がん)のリスクが高まることが確認された(摂取量の少ない人に比べて1.48倍高い)。

 

男性では赤肉摂取量による結腸がんリスクの増加は確認されなかったが、肉類全体の摂取量の多い人(約100g以上/毎日)では結腸がんのリスクの増加が高まった。

 

赤肉や加工肉の大腸がんリスクは、世界がん研究基金(WCRF)や米国がん研究協会(AICR)において確実と評価されており、国際がん研究組織(IARC)においてもおそらく発がん性があるとされている。

 

とはいえ、現時点においては日本人の赤肉や加工肉の摂取量は世界的には低いため、通常の摂取量であれば大腸がんリスクにはほぼ影響しないと考えられている。

 

焼き肉をよく食べる女性は乳がんによる死亡リスクが高い?

2017年にアメリカで報告された研究を根拠としている*6

 

これも統一的な見解となっているものではない。

 

論文の結論を正確に訳すと、焼いた肉(バーベキューした肉)や燻製した肉の多量の摂取は乳がん患者の死亡リスクを高めるかもしれない。

 

というか、これがんの発症リスクの話じゃないですしね。

 

結論 (個人としての見解)

記事中には他にも具体例が挙げられており、全部に言及しようかと思ったのだが、力尽きた長くなってきたのでこの辺でまとめておきたい。

 

結局のところ、がんのリスクとなることが世界的に認識されている食材は赤肉・加工肉と大腸がんとの関係くらいである。

 

その赤肉であっても上述のように平均的な日本人の摂取量であれば大腸がんリスクはほぼ考えにくいとされている。

 

つまり、何かを食べるとがんになるというものはほとんどなく、何かを食べるのを避ければがんにならないというものもない、と考えられる。 

 

これは今回取り上げた食材に限らず、全般に言えることだ。

 

医食同源という造語があるくらい日本人は医療としての食事への思い込みが強く、今回紹介したような記事に踊らされがちな気がする。

 

食事だけでがんの完全な予防は不可能だ。

 

であるならば、肉・魚・穀物・野菜・果物等バランス良く摂ることを念頭に置きつつも、美味しいもの・食べたいと思うものを食べるというのが人生のQOL(生活の質)を高めるうえで重要なのではないかと個人的には思う次第。

(現代の日本の食生活を考えると、野菜や果物は多く摂るよう意識した方が良いとは思うが)

 

また、上述したように食事よりもたばこの方がリスクがあると言え、喫煙されている方はがん予防のために食事に気を付ける前にまず禁煙が大事ですよ、ということで。